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ガス人間第1号 (昭和35年・1960)

ガス人間第1号ガス人間第1号
三橋達也 本多猪四郎 八千草薫
東宝 2007-02-23

胸をえぐる白いガス、科学が生んだの未曽有の恐怖
満都を恐怖のどん底に叩き込んだ姿なき人影 ガスマン!

 第1作『ゴジラ』と同年に製作された空想科学特撮映画『透明人間』(昭和29年・1954)から『美女と液体人間』(1958)、『電送人間』(1960)へと続いてきた東宝・変身人間シリーズの集大成にして最高峰『ガス人間第一号』。意識的に少なめに抑えられた特撮シーンは本編のフォロー役に徹し、木村武による素晴らしい脚本と本多猪四郎監督の見事な本編演出を中心に"異端の恋を描く密度の高い人間ドラマ"を作り上げています。


 怪獣映画やSF映画、戦争映画の様に本編、特撮がはっきり分かれているのではなく、本編部分のフォローに特撮を使用した本作品で本多猪四郎監督達の要望に応えた続けた円谷英二のアイディア溢れる特撮演出も素晴らしいの一言。名作と評される本作『ガス人間第一号』の本編部分を充分にフォローするだけでなく、特撮をしっかりと違和感なく本編に自然に溶け込ませ、特撮でこれ程の人間ドラマが描けることを証明してみせただけでなく、特撮だからこそ出来た人間ドラマの名作。円谷英二の特撮における金字塔の1つといえる作品でもあります。

 CGで処理する現代のSFX技術と比較すると稚拙で雑な部分が目に付くのは仕方がないことですが、当時の手作りでの特撮でこれだけの表現が出来たというのは円谷英二の特撮技術が高度な特撮テクニックを持つと同時に如何にアイディアが豊富であったかを物語るものであり、当時としてはこれ以上のものは望めなかったのではないかという程の出来ではないかと思います。
 光学合成、フィルムの逆回転、上下を逆さにして撮影するなどの撮影テクニックを駆使して、まるで生きているかのように演出された煙。土屋嘉男に似せた実物大のゴム風船が萎んでいく過程を撮影して、そのフィルムを逆回転させて煙と光学合成して水野が人間に戻るシーンを表現した特撮アイディアなど、人間ドラマ中心で少なめに抑えられているとはいえ特撮シーンにも見所が多く、円谷英二の特撮技術を知るためにも最適な映画です。

 『ガス人間第一号』を特撮映画の名作にしているのはガス人間・水野を演じた土屋嘉男の熱演によるところも大きく、人体実験の犠牲者となりガス人間という化け物にされてしまった悲しみ、自分がいつか気体化して消えて無くなってしまうのではないかという恐怖、そして異端の者となってしまった水野の藤千代への悲しすぎる愛を見事に表現しています。
 若き日の八千草薫のしっかりとした演技と立ち振る舞い、そして可憐な美しさも映画に華を添え(八千草薫を見るだけでも見る価値あり)、水野を止めるべく藤千代が企てる壮絶なクライマックスへ向けて本多演出も冴えわたります。藤千代の水野に対する気持ちは愛だったのか、それとも情だったのか、曖昧に明らかにされぬまま迎える、水野の手に握られた藤千代の振袖があまりにも悲しく哀愁漂うラスト・シーンは本作品における土屋嘉男と(ラストには登場しませんが)八千草薫の熱演、そして本多猪四郎監督の演出で作り上げた東宝特撮史上に残る名場面となっています。


[ガス人間第一号 - ストーリー]
 同一犯人によると思われる強盗殺人事件が続発する。完全な密室で行われた犯罪は侵入から逃走に到る方法などの多くの謎を残したが、全ての事件は五日市街道へとつながっていた。事件の捜査にあたる岡本警部補(三橋達也)と婚約者の新聞記者・田野京子(佐多契子)は街道沿いに住む春日流舞踊の家元、春日藤千代(八千草薫)に疑惑を抱き、家宅捜索により盗まれた紙幣を発見、直ちに藤千代を拘留する。
 その頃、警視庁記者クラブに突然現れた図書館員の水野(土屋嘉男)は自分が連続強盗殺人事件の犯人であると名乗り、完全犯罪の種明かしをすると語る。水野は胸に手を当て鼓動を確認しながら精神統一すると半信半疑で見守る人たちの前で次第に気体化してガス人間となった。藤千代の無実を証明するために現れた水野は零落した春日流の藤千代を助ける為、佐野博士(村上冬樹)に騙されて人体実験の犠牲となりガス人間にされてしまった自らの能力を使って、愛する者のために強盗殺人を重ねていたのだった。
 水野は藤千代の釈放を要求するが、警察は脅迫に屈することを良しとせず、無罪と分かっていながら藤千代を釈放しようとはしなかった。水野は岡本警部補の前に現れて語りかける。

「白と分かっていても釈放しないのは法律にそむきませんか?僕は人間じゃないから、人間の作った法律に従う必要は無いでしょう。」
「じゃあ、藤千代を愛する資格も無いな。」
「それは藤千代が決めることだ。」
「君がガス人間だということを彼女は知っているのか?」

 岡本の問いかけに言葉を返せない水野は、集まってきた新聞記者たちの前で藤千代を奪還して踊りの発表会を開かせると宣言して藤千代の留置されている牢獄へと向かう。しかし、水野の助けにより牢獄から逃走する他の囚人達を横目に藤千代は「逃げたら罪になる」と牢獄から動こうとはしなかった。しかし、その後警察は藤千代を釈放、藤千代は悲壮な決意を胸に双葉会館ホールで発表会を行うことを決めるのだった。。。。


ガス人間第一号 ポスター.jpgスタッフ&キャスト
製作・・・・・・・・・・・田中友幸
監督・・・・・・・・・・・本多猪四郎
特技監督・・・・・・・円谷英二
脚本・・・・・・・・・・・木村武
音楽・・・・・・・・・・・宮内国郎

岡本警部補・・・・・・三橋達也
田野京子・・・・・・・・佐多契子
春日藤千代・・・・・・八千草薫
老鼓師・・・・・・・・・・左ト全
水野・・・・・・・・・・・・土屋嘉男
田宮博士・・・・・・・・伊藤久哉
田端警部・・・・・・・・田島義文
稲尾刑事・・・・・・・・小杉義男
藤田刑事・・・・・・・・三島耕
編集長・・・・・・・・・・松村達雄
佐野博士・・・・・・・・村上冬樹


B000JFY0RK東宝特撮 空想科学箱 DVD-BOX
東宝 2007-02-23

珠玉の東宝特撮作品がトールケースになって甦る! 初DVD化となる「透明人間」を含む4枚組DVD-BOX
《収録内容》
DISC 1 「地球防衛軍
DISC 2 「日本誕生」
DISC 3 「ガス人間第1号」
DISC 4 「透明人間」


(2006/10/27)

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 八千草薫・・・この映画撮影時で29歳・・・ たまらない色気です(爆)

comments

土屋嘉男は良い役者さんです!刑事役とか新聞記者とか俗っぽい役がハマリ役で、そういうのをやるといい味出してるんですよねぇ。
「三大怪獣 地球最大の決戦」でのX星人の「われわれは未来に向かって脱出する」も良かった。^^
この映画は名作ですね。八千草薫の綺麗さも悲劇性を深めていると思います。

  • happy
  • 2007年01月28日 20:08

昔何度かテレビ放映で見たっきりなんですが、好きな作品です。
時々また見てみたいなと思っていたのですが、近所のレンタルビデオ店などには置いて無いし、なかなか見直す機会が無かったんですよ。でも、今はDVDが発売されてるんですね。(そういえば少し前にBSでも放映されたみたいですね。)
 何度か「ガス人間第一号」を見る機会があったのが子供の頃だったので単純にSFサスペンス物として見ていたのではないかと思います。でも、未だにこの映画がかなり印象に残っているというのは、水野と藤千代の悲恋話も子供心に微妙に感じていたのかもしれません。

  • jirokichi
  • 2007年02月07日 09:42

特撮以外にも色々出てるんですけど、土屋嘉男は佐原健二、平田昭彦等と並んで東宝特撮には無くてはならない貴重な役者さんですね。なにより当時一般の映画よりランクが下に置かれていた特撮映画でも他の映画と変わぬ意識で熱演を見せるというのは、土屋嘉男が誠実であり、ユーモア、遊び心がある役者さんだということではないかと思います。
 「ガス人間第一号」と同年に製作された「電送人間」に出演させられたことが不満で鶴田浩二は東宝を退社するまでに到ってます。まぁ、それだけが原因じゃないと思いますし、別に鶴田浩二がどうこうと言うのではなくて、当時の役者側から特撮映画に対する一般的な見方だったんだと思います。それだけに、上記3人の役者さんは特撮ファンから愛され、語り継がれ、そして熱狂的な支持を集めているんでしょうね。^^♪

  • axis_009@管理人
  • 2007年02月12日 09:31

日本映画史上に残る名作の1つですね。DVDで何度か見直すと後から役者さんの表情の意味が一段と深く分かったり、最初は気付づかなかった部分がよく分かります。皆さんも書かれていますが、土屋嘉男って良い役者さんですね。
 人間ドラマとしても素晴らしいです。特撮だから、とか、特撮なのに、という前置きが必要の無い、映画として素晴らしい出来だと思います。

  • MASH
  • 2007年02月27日 15:07

安っぽいメロドラマ。でも、そこが良い!!

  • 氷川
  • 2007年07月10日 01:43


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